【2025年版】確定申告完全ガイド~よくあるミスと税務調査とは~

確定申告完全版連載も最後となりました。
最後に、確定申告を行う上でよくあるミスや、万一、申告内容にミスがあり税務調査が入った場合の流れなどについて解説します。
前回までの記事もご確認いただき、確定申告を行う際の参考にしてください。
・確定申告完全ガイド~確定申告の基礎~
・確定申告完全ガイド~必要な書類や所得計算・経費計上について~
・確定申告完全ガイド~具体的な書き方~
・確定申告完全ガイド~e-Taxの基本~
※ITフリーランス向け福利厚生プログラムフリノベ提携 税理士法人松本 監修
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確定申告でよくあるミス
確定申告では、慣れない手続きや専門用語に戸惑い、ミスを犯しがちです。
しかし、申告内容に誤りがあると、後に税務署から修正を求められたり、追加の税金やペナルティが発生する可能性があります。
ここでは、特に注意すべき点や、よくあるミスについて詳しく解説します。
典型的な記入ミス
確定申告でよくある記入ミスとしては、下記が挙げられます。
基礎控除の記載漏れ
基礎控除の記載漏れも、よくあるミスの一つです。
基礎控除は、すべての納税者が適用できる控除であり、合計所得金額から48万円(所得が2,400万円以下の場合)を差し引くことができます。
しかし、申告書に記載を忘れてしまう人が多いです。記載漏れがあると、本来受けられる控除が適用されず、納税額が増えてしまいます。
対策として、申告書の記入時に、基礎控除の欄を忘れずに記載しましょう。
確定申告完全ガイド~e-Taxの基本~で解説した電子申告(e-Tax)を利用すれば、適用可能な控除が自動的に表示されるため、記載漏れを防ぐことができます。
また、確定申告書の控えを見ながら確認すると、記入漏れに気づきやすくなります。
復興特別所得税の記載漏れ
復興特別所得税の記載漏れも注意が必要です。
平成25年から令和19年までの期間、東日本大震災からの復興施策のため、復興特別所得税が所得税と合わせて課税されています。これは、所得税額の2.1%を上乗せする形で計算されます。
たとえば、所得税額が10万円の場合、復興特別所得税は10万円×2.1%=2,100円となります。この2,100円を所得税額に加算し、合計で102,100円を納付することになります。
これを防ぐべく、所得税額を計算した後、その金額に2.1%を乗じた復興特別所得税額を計算し、申告書の該当欄に記載しましょう。計算ミスを防ぐために、国税庁のホームページで提供されている確定申告書作成コーナーを利用することもおすすめです。
予定納税額の記載漏れ
予定納税額の記載漏れも稀ではありません。
前年の所得税額が一定額を超える場合、予定納税を行う必要があります。
予定納税を行った場合、その金額を確定申告時に正しく申告しないと、二重で納税することになってしまいます。
たとえば、前年の所得税額が15万円以上であれば、翌年の予定納税額が通知されます。
予定納税額を確定申告書に記載しないと、納付すべき税額が過大に計算されてしまいます。
対策として、予定納税額を確定申告書に正確に記載し、納税額から差し引くようにしましょう。税務署から送付される「予定納税等通知書」を手元に用意しておくとスムーズです。
出典:国税庁 - 個人の方に係る復興特別所得税のあらまし
出典:国税庁 - 予定納税
出典:予定納税等通知書・減額申請の承認等通知書に係る電子通知について
経費計上の落とし穴
フリーランスにとって、経費を正しく計上しなければ虚偽申告の元となるため、特に注意が必要です。しかし、経費の取り扱いにはさまざまな落とし穴があります。
特に多い経費計上のミスとして、下記が挙げられます。
私的な支出を経費として計上した
私的な支出を経費として計上してしまうことは、よくあるミスの一つです。
事業に関係のない私的な支出を経費として計上することは認められません。
たとえば、家族や友人との食事を接待交際費として計上する、個人的な趣味に関する費用などを消耗品費として計上するなどは、あってはならないことです。
もし、このような私的な支出を経費計上した際のリスクとしては、税務調査で指摘され、経費として認められないことが挙げられます。
また、過少申告加算税や重加算税などのペナルティが課される可能性があります。
それ以外にも、意図的な不正とみなされると、最悪の場合、刑事罰の対象となることもあります。
そのため、事業用と私的用の支出を明確に区分し、事業に直接関連する支出のみを経費として計上しましょう。
プライベートとビジネスの支出を分けるために、事業専用の銀行口座やクレジットカードを利用することもおすすめです。
経費の計上漏れ
一方で、経費の計上漏れも注意すべき問題です。
正当に経費として計上できる支出を計上漏れしてしまうと、余分な税金を支払うことになります。
よくあるケースとして、領収書やレシートを紛失してしまい、経費として計上できなかったり、経費になるかどうか判断がつかず、計上を諦めてしまったりすることがあります。
そのような場合に備えて、日頃から領収書やレシートを整理・保管し、経費の内容を明確に記録しておきましょう。
スマートフォンのアプリを利用して、領収書を撮影・保存する方法も便利です。また、経費になるかどうか迷った場合は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
減価償却の計算ミス
また、減価償却の計算ミスも、経費計上の落とし穴の一つです。
パソコンや事務所の設備など、耐用年数が1年以上で取得価額が10万円以上の資産は、減価償却資産として扱われます。
これらの資産は、一定の計算方法に基づき、数年にわたって経費として計上します。
ミスの例として、一括で全額を経費として計上してしまったり、減価償却費の計算方法を間違えたりすることがあります。
これに備えるべく、減価償却資産の取得時には、耐用年数や償却方法を確認し、正しく計算しましょう。
国税庁の「減価償却資産の耐用年数表」を参考にすることで、正確な耐用年数を知ることができます。また、会計ソフトを利用すると、自動的に減価償却費を計算してくれるため便利です。
減価償却できる資産に関しては確定申告完全ガイド~必要な書類や所得計算・経費計上について~で解説しています。
国民健康保険と国民年金
フリーランスとして独立すると、会社員時代とは異なり、自分で社会保険の手続きを行う必要があります。
特に、国民健康保険と国民年金の加入・納付は重要なポイントです。
フリーランスの社会保険
一般に、会社員は厚生年金と健康保険に加入する義務がありますが、フリーランスが加入する社会保険には、主に国民年金と国民健康保険があります。
国民年金とは、老後の生活を支えるための公的年金制度です。20歳以上60歳未満のすべての国民に加入義務があります。
加入手続きは、年金事務所または市区町村役場で行います。就職や退職に伴い、第1号被保険者(自営業者やフリーランスなど)として加入します。必要なものは、年金手帳、本人確認書類、印鑑などです。
国民健康保険とは、自営業者やフリーランス、無職の人などが加入する公的な医療保険制度です。病気やケガで医療機関を受診した際、医療費の一部(通常は3割)を自己負担し、残りは保険で賄われます。
加入手続きは、会社員・一定の条件を満たしたアルバイトなどの社会保険が適用されていた者としての退職後14日以内に、居住地の市区町村役場で行います。
必要なものは、本人確認書類、印鑑、退職証明書(健康保険の資格喪失証明書)などです。
保険料の計算と納付
国民年金保険料の金額は全国一律で、令和5年度は月額16,610円です。保険料は経済状況に応じて毎年見直されます。
納付方法としては、口座振替、クレジットカード払い、納付書払いがあります。前納制度を利用すると、保険料が割引される特典もあります。6ヶ月分や1年分、2年分をまとめて前払いすることで、割引が適用されます。
一方で、国民健康保険料の計算方法は、前年の所得をもとに計算されます。
所得が高ければ保険料も高くなります。計算方法は自治体によって異なりますが、一般的な算出方法は以下の通りです。
国民健康保険料=(1)基礎(医療)分保険料+(2)後期高齢者支援金分保険料+(3)介護分保険料
ただし、年齢によって下記のように支払う保険料の種類は変動します。
39歳までの保険料 (1)+(2)
40~64歳の保険料(1)+(2)+(3)
65~74歳の保険料(1)+(2)
参考:練馬区 - 国民健康保険料の計算方法(令和6年度)
もし、保険料の納付が困難な場合、所得が低く保険料の納付が難しい場合は、下記の制度を利用できます。
- 国民年金保険料の免除制度では、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除が用意されています。免除制度を利用したい場合、年金事務所に申請します。
- 国民健康保険料の減免制度では、所得に応じて保険料の一部または全額が減免されます。減免制度を利用したい場合は、市区町村に申請が必要です。
ただし、免除や減免を受けた期間は、将来受け取る年金額に影響します。
可能であれば追納(後から納めること)を検討しましょう。
確定申告と住民税の関係
また、確定申告を行うと、その情報が市区町村に提供され、翌年度の住民税の計算に反映されます。住民税は所得税と異なり、自治体が課税・徴収を行います。
住民税の計算方法
住民税は、大きく分けて所得割と均等割の2つの部分で構成されています。
所得割は、前年の所得金額に対して課税されます。
税率は一律で、道府県民税(都民税)が4%、市町村民税が6%、合計税率は10%です。
住民税の算出方法としては下記の通りです。
所得割額 = (前年の総所得金額等 - 各種控除額) × 税率10%
具体例として、前年の総所得金額が300万円、各種控除額(基礎控除、社会保険料控除など)が100万円の場合、課税所得金額は200万円となります。
所得割額は200万円に対して10%をかけて計算し、結果は20万円となります。
均等割は、所得に関係なく、一律の金額を負担します。
金額は自治体によって異なりますが、標準税率は道府県民税(都民税)が1,500円、市町村民税が3,500円、合計で5,000円です。
合計住民税額は、所得割額と均等割額を合計した金額となります。
上記の例では、20万円+5,000円=205,000円が住民税額となります。
納付方法と時期
納付方法として、フリーランスや自営業者の場合、基本的に普通徴収となります。普通徴収では、市区町村から送付される納税通知書に基づき、自分で納付します。
普通徴収のほかには、特別徴収という納付方法があります。特別徴収とは、納税義務者以外の者(給与の支払をする会社など)が、納税義務者から税金を徴収して、それを納税義務者の代わりに納める方法をいいます。一般的には、会社員などの会社に所属している人たちにこの特別徴収が適用されます。
普通徴収の納付方法としては、指定の銀行口座から自動引き落としをする口座振替、金融機関やコンビニエンスストアで納付書を使用して支払う納付書払いがあるほか、自治体によってはネットバンキングやクレジットカードを用いたインターネット納税があります。
納付時期は、通常、以下のスケジュールで行われます。
・第1期:6月(6月末日まで)
・第2期:8月(8月末日まで)
・第3期:10月(10月末日まで)
・第4期:翌年1月(1月末日まで)
出典:個人住民税
出典:大阪府- 納付場所・納付方法
税務調査簡単な基礎知識
フリーランスとして活動する中で、税務調査が行われる可能性があります。税務調査は、納税者の申告内容が正しいかどうかを確認するためのものです。
税務調査の対象と流れ、調査への対応方法
税務調査の対象は、すべての納税者が対象となり得ますが、特に下記の場合に調査が行われる可能性が高まります。
- 大幅な赤字が続いている、経費の割合が異常に高いなど、申告内容に不自然な点が見られる
- 銀行口座の入出金履歴と申告内容が合わないなど、所得の申告漏れが疑われる
- 過去に修正申告や税務調査の指摘を受けており、過去の不備が再発していないかチェックする目的で調査が入る
税務調査は、事前通知・調査・調査の結果説明という流れで行われます。
事前通知として行われることとしては、調査開始の1週間前から3日前までに、税務署から電話や書面で連絡があります。この際の連絡で、調査日時や場所、調査内容が伝えられます。
次に、調査当日には、税務署の調査官が訪問し、帳簿や書類の確認、質問などを行います。調査期間は通常、1日から数日間です。当日に訪問する調査官は、身分証明書を提示する義務があります。
そして、調査が終了すると、指摘事項や修正点について説明があります。この際に、修正申告が必要な場合は、指導に従って対応します。
万一に税務調査が入ると連絡があった場合の事前準備として、必要な書類を準備しましょう。
具体的には、帳簿・領収書・契約書・請求書など、過去7年間の記録を整理しておきます。特に、申告内容と帳簿に記載された内容が一致していることが肝要です。
もし間に合えば、税理士などの専門家に相談し、調査に備えることもおすすめです。
調査当日は、正直に回答し、調査官からの質問には、事実に基づいて正直に答えましょう。もし、わからないことや疑問点があれば、その場で確認します。必要以上に緊張せず、冷静に対応することが大切です。
調査結果が出て、指摘が入った場合には、その指摘に基づいた修正申告や納税を行いましょう。
税務調査が入った際には、強引な交渉は避けましょう。調査官に対して感情的になったり、無理な主張をすると、調査が長引く可能性があります。
また、万一、調査官が不適切な行為を行った場合は、税務署の相談窓口や税理士に相談しましょう。
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