ITフリーランスはノマドワーカーとして海外で仕事できるのか？

作成日：2024/08/29（木）業界動向

ここ3、4年で一気に増加したリモートワーク。これを機に地方へ移住したという人もいるでしょう。また、リモートワークという働き方が浸透したことで、今後地方や海外へ移住し、私生活も充実させながら働きたいと考える方も多いのではないでしょうか。

特にITエンジニアは、パソコンとWi-Fi環境があれば働けるだろうと「ノマドワーカー」を希望する方のご相談もありますが、実際に海外移住やノマドワーカーとして日本の企業から仕事を獲得することは可能なのでしょうか？

この記事では、ITエンジニアが海外で生活しながら案件獲得できるのかについて解説していきます。

リモートワーク率

海外にいながら日本企業の仕事をする場合、基本的にはフルリモートの案件以外は選択肢がないでしょう。では、オフィス回帰が進む今、フルリモートで仕事ができる企業はどれぐらいあるのでしょうか？

一時は65％にまで昇ったリモートワークの実施率は、2024年3月の調査では18.1%*¹まで減少しました。近年のワークスタイルの変化で、リモートワークを実施していた企業は、オフィス勤務へと戻りつつあり今後もその動きが続くと見られています。
働き方のオプションの一つとしてリモートワークを導入している企業でも、出社とリモートワークの日を分けるなど、フルリモートで働くことのできる企業は減少傾向にあります。

*¹東京都テレワーク実施率調査

フルリモート可能企業なら海外に仕事を持っていけるか

そもそもフルリモートでの仕事が可能な企業は、業界・業種によって限られます。IT業界はリモートワークのしやすい業界と言えますが、フルリモートが可能な企業であれば海外でも仕事はできるのでしょうか。

結論から言えば、業務委託契約で仕事を請ける場合、かなりハードルは高くなります。リモートが可能だからといって居住地や仕事をする場所が自由に選択できるわけではありません。

その理由は、ITエンジニアが業務委託で仕事をする場合、基本的にチームでの作業が前提となるためです。チームと足並みを揃えるために、スムーズなコミュニケーションを取れることを前提としており、時差がある場合、会議の設定などが難しくなるためです。

またセキュリティ面でも課題があります。チームの作業時間と合わせられたとしても、パソコンを貸与される場合は、海外等への持ち出しは許可されないことが多く、特別な申請が必要な場合があります。ご自身のパソコンで作業する場合でも、社内ネットワークに海外から接続することを許可していない企業が多いのが現状です。
移住先の住所を固定し、安全なセキュリティ環境下だと証明できることが必須の条件となりますので、住所を固定しないノマドワーカーとして仕事をすることはまず難しいでしょう。

このような理由から、海外での仕事を希望する人より日本で作業ができる人が優先されるため、エージェントから案件を紹介すること自体が困難になります。まずは日本での実績を積み、評価を得てから海外での仕事が可能か交渉を進めましょう。

海外移住して、ITフリーランスで日本の仕事を請けることは課題が多く、ハードルは高いです。どうしても希望する場合は、難しい理由も理解したうえで相談してみましょう。

その中でも海外作業を可能にする方法は？

業務委託契約では課題が多く、なかなか難しい海外作業ですが、請負契約であれば可能な場合があります。
現在、海外での作業も可能と謳っているエージェントは基本的に請負契約となり、クラウドソーシングなどの仕事を切り出したものです。一人で完結する作業が大前提となります。
ただし、クラウドソーシングの案件は単価が低い傾向にあります。国の物価にもよりますが、海外で生活するために必要な収入がどの程度なのかも考慮しながら案件を選ぶようにしましょう。

また請負契約の案件では、しっかりとした報酬をもらえることも多いですが、完成責任、瑕疵担保責任があります。要求されているものを確かに納品できる実力が必要となり、条件面だけで仕事を選ぶと、クライアントの要求を満たせずに無収入になる可能性や、継続して仕事を請けられない可能性もあります。

その点において、ライターやデザイナーなど完成物が明確な仕事であれば、海外での作業もハードルが低く、スタートしやすい職種といえるでしょう。

スキルを積んで海外への足がかりを

「海外へ移住して働くのが夢」というITエンジニアの方は、まず一人で作業をこなせるフルスタックエンジニアを目指しましょう。
フルリモート且つ、海外での作業となると、頼れる人はほとんどいません。自分で全てこなさなければならず、税制面や、ビザなど心配事は仕事面以外にも及びます。
日本にいる間にできるだけの知識とスキルを携えましょう。ITフリーランとして活躍し人脈を広げる中で、海外でも仕事ができる企業と出会える可能性もあるかもしれません。

まずはしっかり一人前になるスキルを積むための下準備をしましょう。