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AIと働く時代にITエンジニアが身につけるべき4つのマインドセット

作成日:2025/07/14(月) 業界動向

AIと働く時代にITエンジニアが身につけるべき4つのマインドセット

AIはもはや「未来」ではなく「日常」となりました。
GitHub Copilot、Cursor、Claude CodeのようなAIツールがシステム開発の現場に広まり、多くのエンジニアの業務が今まさに変化しつつあります。


AIツールを効果的に活用し、システムや組織の最適化を図る能力が必要とされる時代がやってきています。近年では特にAIコーディングの進歩によって、「自分の仕事がなくなるのではないか」といった不安の吐露がSNS上でよく見られるようになりました。一方で多くの企業は積極的にAIを取り入れたいと考えており、各社のビジネス環境に応じて適切にAIを導入できるエンジニアが求められています。ITエンジニアにとって、AI活用は他人事ではありません。


では、AIが私たちエンジニアの働き方にどのような影響を与えるのか、そしてそれが自身のキャリアや市場価値にどう関わってくるのかを、より具体的に見ていきましょう。

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AI活用力が市場価値を高める

AI活用力が市場価値を高めるの画像

AI時代において、エンジニアのキャリアを左右するのは「AI活用力」です。なぜAI活用力がエンジニアの市場価値を高めるのか、具体的な理由を3つの視点から解説します。

高い生産性

システム開発において特に注目すべきなのは、AIコーディングです。コーディングアシスタントやコーディングエージェントのようなAIツールを活用することで、開発作業を大きく効率化することができます。


開発業務以外にも、議事録の作成や社内ナレッジ管理、提案資料の作成といった定常業務をAIを用いて自動化・効率化すれば、他の創造的なタスクに時間を費やすことができます。

市場需要の高まり

企業としても生成AIを積極的に活用したいと考えています。AIの特性を理解しながら、社内の業務プロセスにAIを組み込み、チーム全体の生産性を向上できるエンジニアが求められています。


また、チャットボットのようなAIエージェントを利用したシステム開発案件の増加も予想されます。AIエージェント開発を専門とする「エージェントエンジニア」という職種も見られるようになりました。このような分野のエンジニアはまだ希少価値が高いと言えます。

適応力の証明

AIは今まさにアップデートされ続けている最先端の技術分野です。AI活用スキルを習得していること自体が「変化に対応できるエンジニア」であることの証明になります。


AIの進化は、ビジネスサイドにおいても目まぐるしい変化を生み出すことが予想されます。技術環境の変化だけでなく、ビジネス環境の変化にも適応できるエンジニアがますます求められていくことになるでしょう。

AIで変わるITエンジニアの仕事

AIの進化で、実際の業務にどのような変化が起きているのでしょうか。


AIコーディングツールの普及により、プログラミングのアプローチが根本的に変化しつつあります。GitHub CopilotやCursorなどのコーディングアシスタントは、コードの自動生成から設計提案まで、開発プロセス全体をサポートします。これにより、エンジニアは詳細な実装よりもアーキテクチャ設計や要件定義などにより多くの時間を割けるようになりました。


更に近年では「Agentic Coding」と呼ばれるパラダイムが話題となっています。これは自然言語の指示だけでAIが自律的にコーディングを担うようなプログラミング手法で、更なる開発効率の向上が期待されています。


こうしたコーディングスタイルでは、プログラミング言語の構文やライブラリの仕様を理解すること以上に、適切な指示を与えて目的のコードを生成させる能力が重要となります。これにより、プログラマの役割は「コードを書く人」から「システムを設計し、AIと協働して実装する人」へと変化しつつあります。


またコードレビューやテストの自動化、ドキュメントの作成支援など、開発ライフサイクル全体でAI活用が進んでいます。よく見られるAI活用の事例としては、社内のナレッジベースからチャットで対話的に情報を引き出せるようにすることや、市場調査や技術動向の分析などが挙げられます。

ティム・オライリーが語るプログラミングの未来

こうした変化の先には、どのような未来が待っているのでしょうか。AI時代のソフトウェアエンジニアリングについては、ティム・オライリーがプログラミングの展望を予測した記事が参考になります。


ティム・オライリーはIT技術書の代表的な出版社であるO'Reilly Mediaの創立者です。また彼はオープンソースソフトウェア運動を推進したり、「Web2.0」という言葉を作ったことでも有名な人物です。ITの未来を見通し、実際に動かしてきた人物の一人といえます。


AIエージェントと対話することで、プログラマ以外でもシステム開発できるようになることが予想されます。
彼は「プログラマの仕事がなくなるのではないか?」といった不安の意見に対して、物理回路からアセンブリ言語、高級言語へと移り変わったように、「これまでのプログラミングの終焉」が再び起こるだけであると予測しています。


これにより「プログラマ」が直ちになくなることはない一方で、プログラミングがより多くの人に開放され、エンジニアの役割がより高次元の問題解決に移るのだと彼は考えます。
単純なコーディング作業がAIに委譲される一方で、ITエンジニアはシステム全体の設計者、AIの管理者、そして複雑な問題解決の主導者としての役割がより重要になります。やがてプログラマは、広い意味での「デベロッパー」、ソリューションアーキテクトへの役割の拡張が進むだろうと述べています。


また彼は産業革命の例を挙げ、当時の技術者が新しいスキルを身につけるために「実践による学習」を繰り返してきたことを指摘しています。
AI時代においても同様に、エンジニアはAIとの協働を前提とした新しいスキルセットを身につける必要があると考えられます。


筆者もここ数年のAIの爆発的な進化をまざまざと見て、いま大きな時代のうねりの最中にいることを肌で感じています。「Agentic Coding」を一度経験するだけでも、やがて来る「プログラミングの終焉」は容易に想像できるでしょう。
しかしその一方で「何もかもがAIに代替される」というようなAIへの過剰な予測や期待も散見されます。実際にAIツールを使い始めると、AIにすべてを任せることはできず、得意なことと不得意なことがあることが見えてきます。
かといって、いまはAIの進歩は驚異的なスピードであるため、それは特定のAIツールに深く詳しくなるということでもなさそうです。継続的な実践を通じて「いまの」AIの可能性と制限を探り続ける姿勢が不可欠だと感じています。

AI時代のマインドセット

AI時代のマインドセットの画像

ティム・オライリーが示唆するような大きな変化に対応するには、エンジニアのマインドセットも変える必要があります。
ここではAI時代に求められる4つのマインドセットを紹介します。

「完璧主義」から「反復改善」へ

AIツールを活用することで、今まで以上にアイデアを素早く形にし、ステークホルダーからのフィードバックを早期に得ることができます。以前からアジャイル開発が唱えてきたような反復的・継続的な開発、そしてビジネスドメインの理解やステークホルダーとの積極的対話のようなプロセスがますます重要となるでしょう。


また先に述べたように、AI時代の新しいスキルは実践的に学習する必要があります。
実際にAIツールを使用することで、その可能性と限界を自分で体験して学ぶことが重要です。「完璧主義」になりすぎず、積極的に実業務でも試してみる精神が必要です。
例えば、コーディングエージェントの出力はまだ完璧ではありません。しかしその圧倒的に高速なコーディング能力を、品質を担保しながらどのように業務へ導入できるか検討するといったことが実践的な学習となります。

「単独作業」から「AI協働」へ

AI時代のエンジニアは、AIツールとの協働を前提とした働き方を身につける必要があります。自分の強みとAIの強みを正確に理解し、適切な役割分担を行う能力が求められます。


特に重要なのは、論理的思考力です。エンジニアはAIが生成する結果の妥当性を批判的に評価・検証し、改善していく能力が求められます。
その際にはエンジニア自身の知識・経験も必要になるでしょう。現在のAIの能力では、まだAIを使うエンジニア自身の能力が必要とされます。裏を返せば、まだ自分の強みを活かすことができるということでもあります。
自分の強みを活かしながらAIと協働する方法を模索しましょう。

「知識暗記」から「AI対話」へ

AIは指示が曖昧なときに、往々にして期待とは異なる結果を返します。
AIとの協働においては、曖昧な要求を具体的で実行可能な指示やワークフローに変換するスキルがより重要になります。その際には問題の本質を理解し、AIが理解しやすい形で課題を分解する能力が求められます。


またAIの回答を評価し、AIが何を考えているかを推測し、適切な対話や指示によって改善を促す必要があります。これは従来、現場のエンジニアというよりも組織のマネージャが培ってきたマネジメントスキルやコミュニケーションスキルに近しいものでしょう。


一つ前の項目でも述べたように、知識が不要になるわけではありません。AIへ指示を具体的にしようとするときにもすぐ知識が必要になるでしょう。
一方でエンジニアの役割がアーキテクトに近づくほど、具体的なルールやタスクの暗記というよりも、より抽象化された「汎用的に使える知識」が必要になると考えられます。

「個人最適」から「全体最適」へ

AI時代においては、個人のスキル向上だけでなく、チームや組織全体でのAI活用戦略が重要になります。AIツールの効果的な活用方法をチームや組織内で共有し、組織全体の生産性向上を図る文化づくりが必要です。


これには、AI活用のベストプラクティスの蓄積と共有、チームメンバーのAIリテラシー向上、そして適切なAIツールの選択と導入プロセスの設計が求められます。ITエンジニアは、こうしたタスクで技術的リーダーシップを発揮することが期待されます。

すぐに始められるAI活用

マインドセットとして、実践的な学習が重要だということを述べました。
ここでは実際の業務でも簡単に始めやすく効果を感じやすいAI活用例を紹介します。以下の例では、GitHub CopilotやCursor、Claude CodeなどのAIコーディングツールの利用を前提にしています。


なお「Agentic Coding」のような先進的な手法は大きな効果を期待できますが、実業務での導入にはまだ調整や評価が必要です。リファクタリングも利用を検討したくなるタスクではありますが、大規模なコードベースであったり、コーディングAIがあまり得意でない技術スタックを利用している場合などでは、すぐには期待通りの成果が得られないことも多いでしょう。

複雑なコードのロジックを説明してもらう

複雑なメソッドが含まれるファイルを指定して、「(メソッド名)のロジックを説明して」とAIに質問します。


メソッドが冗長だったり、複雑な条件分岐が実装されているような場合で特に役立ちます。
AIの回答内容でよくわからないところがあれば、「nullが渡された場合にはどういう挙動になりますか?」 「すべての分岐パターンを一覧にしてください」といったように深掘りします。AIがクラスやデータフォーマットを理解できていないと感じたら、それがわかるファイルも合わせて確認するように指示すれば、回答の精度が上がります。

アプリケーションのエラーログから原因調査する

特に心当たりがなければ、ひとまず何も考えずエラーログやスタックトレースをそのままAIに質問してみても良いでしょう。


一般的なエラーログのフォーマットであれば、AIはそれをエラーログであると認識し、考えられるエラー原因や解決策を提示してくれます。エラーメッセージや例外クラスなどからコードの該当箇所がわかるようであれば、一つ前の項目と同様に当該箇所での問題が発生するパターンをより深く追求していくこともできます。

一緒に要件整理や設計をする

今ある要求を伝えて、質問を受けながら要件整理しましょう。既に要件がはっきりしているのであれば、事前に要件を整理したファイルを用意して、そのファイルを元に設計を依頼すると効率的です。


なんといってもAIは幅広い知識を持っています。まだ自身が詳しくない領域において、アプリからインフラまで含めたアーキテクチャを提案してもらうと非常に助かります。要件整理では、現状の整理にもっと確認すべき点がないかAIに尋ねると効果的です。
AIと相談した結果をファイルに出力させておくと、その後の実装時にもAIに仕様を再確認してもらうデータとして役立ちます。ただし、最新技術に疎いといったLLMの特性にも注意してください。

テストコードを実装させる

テスト対象のコードをAIに伝え、「このコードのユニットテストを書いて」と指示します。


既存コードに対してテストケースを生成させることで、テストカバレッジを効率的に向上させることができます。テストコードであれば比較的、AIによるコード生成を試しやすいはずです。
特に既存プロジェクトでテストが不足している場合や、新規実装に対して網羅的なテストを追加したい場合に有効です。

社内向けチャットボットの作成

Google NotebookLMなどのツールを使えば、社内向けチャットボットを容易に構築できます。


社内ナレッジはしっかりと書いているにも関わらず、今一つ活用されずに直接質問されてしまうこともしばしばだと思います。
それぞれが自分の言葉で質問することができるので、大量のドキュメントから目的の内容を探すような手間が必要ありません。
よくある質問に対する対応時間の削減も期待できます。どのような資料を読ませるかによって、オンボーディングのためや社内の他部署のためなど、様々な利用シーンが考えられます。

AI時代のマインドセットに変えよう

AI時代のエンジニアにとって重要なのは、実際にAIツールを使用し、その可能性と限界を自分自身で体験することです。
理論的な理解だけでなく、実践を通じてAIの特性を把握し、効果的な活用方法を見つける能力が求められています。変化を恐れるのではなく、むしろ新しい可能性として捉え、積極的にAI活用スキルを磨いていくことが、これからのエンジニアに求められる姿勢といえます。


AIとの協働を前提とした新しいマインドセットを持ち、AIと協働する能力を身につけることで、次世代のエンジニアとしての高い市場価値を得ることができるでしょう。ITフリーランスとして活躍し続けるためにも、まず身近なユースケースでAIツールを活用することから始めてみましょう。


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