Agentic Codingとは? AI時代の新しい開発手法を知ろう
AIでコードを書く時代がもう始まっています。
開発現場でGitHub Copilotの利用率は急速に拡大し、Claude CodeやKiroといったAIを利用する開発ツールが続々と登場しています。この変化に乗り遅れることは、エンジニアとしてのキャリアにとって致命的になりかねません。
特に「Agentic Coding」と呼ばれる新しい開発パラダイムは、AIに複雑なタスクを自律的に実行させることを可能にしています。こうした手法を理解し、使いこなせるかどうかが、今後のエンジニアの市場価値を大きく左右するでしょう。
本記事では、Agentic Codingの定義や「Vibe Coding」との違い、活用のポイント、注意点を解説します。
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Agentic Codingとは?
Agentic Codingは、AIエージェントにタスクを自律的に実行させる開発手法です。Anthropic社が2025年4月の記事でClaude Codeを「Agentic Codingのためのツール」と説明したことで注目を集める一因となりました。
自律的なAIエージェントによる開発
Agentic Codingは、AIエージェントに「計画を立てさせる」ことにより複雑なタスクを自律的に遂行させます。これにより、アーキテクチャ設計やリファクタリング、エラー分析といった複数のサブタスクを必要とするようなタスクを実行することができます。
しかしながら、現在のAIエージェントは全てのタスクが上手にできるわけではありませんし、AIエージェントが立てる計画が必ずしも満足のいくものではありません。エンジニアはAIエージェントが「良い計画を立てて」 「適切にタスクを実行できる」ように支援する必要があります。
エンジニアはAIへの適切な情報提供、外部ツール(MCPサーバーなど)の活用指示、人間が介入するワークフロー構築など、タスク実行に必要な設計を担います。つまり、エンジニアはその時々の状況に応じて、AIエージェントに任せた方が良いこと、任せない方が良いことを適切に見極める必要があります。また、これらタスクをAIに指示通り遂行してもらうため、プロンプトエンジニアリングのスキルが重要です。
一方で、Claude CodeのようなAgentic Codingを想定したツールでは、エンジニアとAIエージェントの間での優れた計画立案をサポートする機能を持ち、日々進化しています。
利用シーン
Agentic CodingはAIと人間の協働を重視する手法です。Agentic Codingの使い方や利用シーンについては、Anthropic社が公開したベストプラクティスをまとめたドキュメントが参考になります。
https://www.anthropic.com/engineering/claude-code-best-practices
1. 探索、計画、実装
AIエージェントに最初からコーディングをさせるのではなく、段階的にタスクを実行させるように制御する典型的なアプローチです。
既存コード理解 → 実装計画 → 実装
重要なのは、合間合間に人間がAIエージェントの生成物を確認するステップを挟むことです。ステップの合間に調べた結果や計画を出力してもらい、指示者が結果を確認します。
問題があれば指摘して修正してもらったり、あるいは指示する側がわからないことがあれば質問します。その"相談結果"を反映して、AIは次のステップを行います。
2. テスト駆動開発
AIエージェントによる実装は非常に高速である一方で、書かれたコードが本当に問題ないのかをなるべく自動的に検証する仕組みが重要となります。
結局、人間がAIの書いたコードを全部読み返すのでは効率化できません。システム開発ではもともとそうした問題に対してよく知られたプラクティスがあります。それがテスト駆動開発です。
テスト駆動開発は「先に仕様に沿ったテストコードを書き、そのあとでテストコードが成功するように実装する」というステップを踏む開発手法です。
テスト駆動開発の考え方において、テストコードは仕様をコードの形に変換したドキュメントになります。「テストコードが成功する実装は仕様どおりである」と考えられるので、AIが生成したコードに対してもシステマチックに一定の品質保証が可能になります。
仕様整理 → テストコード作成 → 実装 → 検証
このアプローチは、テストコード自体が誤っていると前提が引っ繰り返ってしまうため、テストコードの品質担保が重要となります。テストコードそのものの品質だけでなく、シンプルなテストコードになりやすい仕様設計をAIと丁寧に行う必要があるでしょう。
3. ビジュアルを用いた改善ループ
現在の生成AIには、画像認識の能力が高く、また画像生成が可能なモデルも多いため、テキストに拘らずビジュアルを用いた指示を積極的に活用することができます。
参考URLを共有 → 変更点を指示して画像を作成 → 画像からコードを作成 → スクリーンショットなどを共有しつつ修正指示
画像認識と画像生成を組み合わせることで、デザインとコードの間を柔軟に早く接続することが可能になります。
特にPoCや設計フェーズで高速に形にしたい場合に効果的です。
加えて、AWSがKiroというAI IDEを公開したことで、「仕様駆動開発」というアプローチも生まれています。
最初からAIにコーディングをさせるのではなく、AIと協力しながら要件定義や設計を行って仕様書を作成・更新させ、それらの仕様書をもとにしてAIに自律的にコーディングさせるような進め方です。
Vibe Coding との違い
AIを用いたコーディングスタイルの一つとして、「Vibe Coding」が知られています。ここでは「Agentic Coding」と「Vibe Coding」とで何が違うのかを整理します。
なお両者はほぼ同時期に現れた概念であり、大きな差異があるというよりもAIコーディングスタイルの異なる側面を指すと考えてよいでしょう。しかしその差異を理解することで、AIを用いた開発パターンが明確になります。
Vibe Codingとは?
Vibe Codingとは、AIと対話的にコードを生成・改善していく開発パラダイムの1つです。2025年2月、アンドレイ・カーパシー氏がXで投稿し、AIを最大限活用する新しいコーディングスタイルとして爆発的に普及しました。
Vibe Codingでは、例えば「投稿が24時間で消えて、いいねの代わりに絵文字リアクションのみである、Xみたいな感じのSNS」のような抽象的な指示からAIにアプリケーションを生成させます。
生成されたものを確認しながら「ユーザがリアクションに気付くように通知する機能を追加してほしい」などと対話を繰り返すことで洗練させていきます。
従来の開発パラダイムからの重要な変化は、コードの細部を気にしないことでした。コードはAIに書かせるものであり、従来の人間によるコーディングのように1つ1つの記述に拘りません。
初期のGitHub Copilotのような「Coding Assistant」は人間によるコーディングをAIに支援させるツールでしたが、Vibe Codingはそもそもコードを極力気にしません。
Vibe Coding と Agentic Coding の関係
Agentic Codingが現れた背景には、AIエージェントの進化があります。1つのAIエージェントがコーディングだけではなく、PC上でのコマンド実行、情報検索、ブラウザ操作などといった外部タスクを容易に実行できるようになりました。
これにより、複数のサブタスクを組み合わせた複雑なタスクを実行できるようになりました。またLLMのコンテキストサイズが年々拡大していることも大きな要因です。
これらの発展により、Vibe Coding的な発想では現実的に難しかった、大規模コードベースのリファクタリングのような「とはいえコードを気にせざるを得ない」タスクも細かくワークフローを指示することで、実現可能になってきました。
やがてClaude Codeが「Agentic Codingのためのツール」として発表され、こうした手法が扱いやすくなりました。
Vibe Coding と Agentic Coding の使い分け
プロジェクトの性質や開発フェーズに応じて、これらの手法を使い分けることが重要です。
Vibe Coding的なアプローチは、プロトタイピングのようなタスクに向いています。ビジネスサイドに検討してもらうためのアプリやUIのプロトタイプを作ったり、アイデアを実現可能か一旦形にしてもらうなど、自律型AIエージェントを使えばお風呂に入りながらでもアイデアを形にしてみることができます。
一方で、複雑な要件を持ち保守運用が必要であるようなシステムをVibe Coding的なアプローチで作るのは、現状のコーディングAIの性能では非常に危険を伴うでしょう。
Agentic Coding的なアプローチで、適切にプロジェクトの要件や制約のようなコンテキストを伝えながら、自動テストのような品質保証の仕組みを入れたり、AIに任せるべきタスクと任せてはいけないタスクを検討すべきです。
実際の開発現場では、これらの考え方を組み合わせることになります。例えば、プロトタイプはVibe Coding的なアプローチで素早く確認してもらいます。その後、Agentic Coding的なアプローチでプロダクション品質に作り直す、といった進め方が考えられます。
しかし、どちらの手法にも共通するリスクが存在します。
「便利そう」で飛びつく前に知っておくべきリスク
ここまでAI駆動開発の利便性を説明しましたが、AIを用いたシステム開発では以下のような基本的な問題やリスクがあることは忘れてはなりません。実業務においては、特に品質やセキュリティの課題に対してどのように対処できるかが重要な論点となります。
コード品質
AIが生成するコードは必ずしも信頼できるわけではありません。生成されたコードの処理が単に誤っているというケースはもちろんなのですが、コードが実行される文脈をAIが理解していないためにエラーや非効率を引き起こしたり、例外処理や可視性など保守運用の観点で注意すべきポイントを抑えていなかったりします。
例えば、AIはローカル環境と本番環境の違いを理解できず、本番環境での動作を保証できないことがあります。
こうした問題には、人間によるレビューだけでなく、静的解析や自動テストといった既存の枠組みの積極的な活用がまずは有効です。
また何故そのような問題をAIエージェントが引き起こしてしまったのかを考え、プロンプトに適宜反映していくことも重要です。
セキュリティ
APIキーなどのクレデンシャルの取り扱いには繊細な対応が必要です。コード上ではクレデンシャルのハードコーディングといったリスクが考えられますが、それ以外にもAIエージェントが勝手にAPIキーを使ってしまうリスクを考慮すべきです。
「AIエージェントがデータを勝手に削除してしまった」といった非常に危険な事例も見られます。またセキュリティ観点で脆弱なコードが実装されてしまうリスクもあります。
コンプライアンスの観点でも、.envファイルのようなクレデンシャルを含むファイルをLLMに読ませないようにする設定が重要です。
そのほか、AIコーディング時のサンドボックス環境の利用や、セキュリティテストの自動化等が対策として挙げられます。
シャドーAI
コーディングAIは誰でも開発できる能力を持っているからこそ、裏を返せば知らぬ間に開発され使われてしまうリスクがあります。
特にLLMはインプット・アウトプットともに社内情報や顧客情報のようなセンシティブなデータが使われやすい傾向にあるため、企業にとっては非常にリスクが高いといえます。
社内でAI利用ポリシーを策定することや、IT部門から現場の要望に応えるサービスを提供するような仕組みづくりが大切です。
プログラマの仕事はなくなるのか
「AIでコード書けるならプログラマーは要らない論」は誤解です。ただし、プログラマに求められるスキルが変化していくとは考えられるでしょう。
AIエージェントは多岐にわたるタスクを自律的に実行できるようになりましたが、ここまで述べていたようにエンジニアのサポートは依然として必要です。
ソリューションアーキテクト
コーディングが減ったとしても、広義の「デベロッパー」としてのエンジニアの仕事はなくなりません。
典型的には、ビジネスサイドの要求に対してシステムの形に落とし込むソリューションアーキテクトとしての役割は引き続きエンジニアの仕事でしょう。
現在のAIは記憶できるデータサイズ(コンテキストサイズ)の制約が大きいため、ビジネスサイドの要件を広く見渡しながら、システム全体を最適に設計・管理することはまだ人間の役割であろうと考えられます。
コンテキストエンジニアリング
近年ではプロンプトエンジニアリングの上位概念として、「コンテキストエンジニアリング」という技術分野が提案されています。
ビジネスやシステムなどのコンテキストを適切なツール、データ形式、タイミングでAIに渡すことを設計・構築する技術のことです。つまり、ビジネスやシステムなどのコンテキストをAIに伝わるように翻訳する技術、と言ってよいのではないでしょうか。
品質保証
AIエージェントが生成するコードの信頼性はまだ非常に高いわけではありません。
また実業務のコーディングでは、ビジネス上のコンテキストが複雑であったり、それらが未整理のままに保守を続けていることも多くあるでしょう。
コーディングが高速であるというメリットを最大限享受するためには、品質保証する仕組みをいかに設計するかが重要になります。
これは必ずしも機械的な仕組みに限らず、「人間がどの程度介入してレビューすべきか」といったワークフローの検討も含むでしょう。ひいては、その品質保証結果をいかにAIにフィードバックするかの設計も重要となるはずです。
まとめ
AIを用いた開発手法は、従来の「補助ツール」という位置づけから「協働パートナー」へと大きく進化しています。
「Agentic Coding」は、プロトタイピング以外のコーディング作業におけるAI活用の可能性を飛躍的に向上させました。また「Vibe Coding」的アプローチと適切に使い分けることで開発生産性の向上を実現できます。
AI駆動開発はソフトウェア開発の大きな変革です。
今から始めることで、未来の開発スタイルに適応し、市場価値を高めることができます。まずは試しながら自分の武器にしていく姿勢こそが、新時代のエンジニアにとってのスタンダードとなるでしょう。
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