Claude Codeを使ってAgentic Codingに入門しよう
近年、AI開発支援ツールは急速に進化しています。GitHub CopilotやCursorといったコード補完ツールは、より自律的なシステムへと発展しました。その中で生まれたのが「Agentic Coding」という新しい開発スタイルです。
Agentic Codingとは、AIが主体的にコーディングを進める開発手法のことです。このAgentic Codingのための開発ツールとして、Claude Codeが話題となっています。
本記事では、Claude Codeを用いたAgentic Codingの基本的な手法や、業務で利用する際の注意点を説明します。
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Claude Codeとは
Claude Codeは、Anthropic社が開発したAgentic CodingのためのコーディングCLIツールです。Anthropic社は、コーディング能力に優れた生成AIモデル「Claude」を提供している企業でもあります。
Claude CodeはCLIツールであることにより特にエンジニアから広く好評を得ました。その理由の1つには、既存の開発ツールやワークフローと統合しやすい点にあります。Claude Codeが正式リリースされた2025年5月には、Claudeの定額利用プランが提供開始されたことも大きな起爆剤となりました。
CLIツールといっても、VS Codeとの統合機能によりIDEとともに利用できます。さらにGitHub Actions統合によりDevinのような完全自律型エージェントとしても使えます。
Claude Codeの基礎
Claude Codeのインストール方法は、Anthropic社の公式ドキュメントを参照してください。
Claude Codeには多くの機能があるため、ここでは基礎知識と重要機能に絞って説明します。
基本的な使い方
「claude」コマンドを実行すると、AIエージェントと対話するインタラクティブモードとしてClaude Codeが起動します。自然言語で指示することで、AIエージェントがタスクを実行します。「claude "おはよう"」のように引数にメッセージを渡すことで、ワンショットタスクも実行できます。
コードベースの自動理解
Claude Codeは手動でコンテキストを選択することなく、プロジェクト全体を自動的に理解します。そのため、複数ファイルにまたがる協調的な変更ができます。「@filename」や「@directory」のような記法により、参照させたいファイルやディレクトリを具体的に指示することも可能です。
コマンド実行と権限管理
Claude Codeはコーディングだけでなく、任意のコマンドを実行させたり、MCPサーバに問い合わせることで外部ツールを利用させることが可能です。一方でこうした機能にはセキュリティ上の危険もあるため、設定ファイルで実行権限を制御することが重要です。
メモリとコンテキスト管理
Claude Codeは会話履歴や重要な情報を記憶しています。またプロジェクト直下の「CLAUDE.md」ファイルは、プロジェクト単位のメモリとして機能します。要件やビジネスルール、アーキテクチャ、開発ルールなどを記載しておくことで、プロジェクトに適した提案を得ることができます。
Agentic Codingでの開発例
仕様駆動開発によるタスク管理アプリの作成を例に、Agentic Codingの開発スタイルを掴んでみましょう。
仕様駆動開発とは
仕様駆動開発は、Agentic Codingを用いた開発方法の1つです。AIと対話的に要件定義書や仕様書、設計書などを作成するステップを踏んだ上で、ドキュメントに基づいてAIに実装を進めさせるアプローチをとります。
なお、以下の対話例は開発イメージを掴むためのサンプルになります。対話例のプロンプトのみで実践的に使えるものではないことにご留意ください。実業務においては、事前により細かく開発スタイルやプロジェクトルールなどをプロジェクトコンテキストに設定しておく必要があります。
要件〜設計
では、対話の例を見ていきましょう。本稿の例ではVSCodeの拡張機能を利用してClaude Codeと対話します。
まず、仕様駆動開発でタスク管理アプリを作りたいことを伝えます。具体的には、要件定義書、設計書、実装計画書の作成を依頼します。また、これらのドキュメントを順に一つずつ確認していきたい旨も伝えます。
今回はタスク管理アプリを開発する例をあげます。
要件定義書を作成するために、Claude Codeの側から基本的な要件を質問されました。いくつかの例も示してくれています。
ここではシンプルな仕様のWebアプリを開発することとします。
こちらから提示した情報をもとに、要件定義書が作成されました。
同様に、設計書、実装計画書も順に作成してもらいます。実装計画については、テスト駆動開発を意識するように指示をしました。
ここまでの流れで、要件定義書や設計書、実装計画書が作成されました。
この例では流れを優先して特にAIに指摘していませんが、例えば「通知機能を追加してください」「利用者を増やすには他にどんな機能があると良いか提案してください」「別のライブラリを使ってください」などとAIと積極的に対話することで、より良い設計にできます。また、この段階できちんと話し合っておくことでのちの手戻りを低減することに繋がります。
仕様と実装計画に基づく実装
開発ルールに基づく実装
実装計画書にも問題ないことを伝え、いよいよ実装に入ります。
実装計画書に沿ってTODOリストを検討し、まずプロジェクトの初期セットアップを行っています。テストや静的解析、フォーマッタのような開発基盤構築も自動で行っていることがわかります。
テスト駆動開発をするよう事前に伝えていたので、Red-Green-Refactorサイクルに基づいて実装を進めています。
実装計画で整理されたフェーズの順に実装が進み、一通りの実装は完了しました。
このようなWebアプリケーションが完成しました。
動作確認してみると、タスクの追加・編集・削除、フィルタリングやソートなどしっかり機能しています。
UIデザインの改善
基本機能が完成したら、次にUIを改善してみます。Agentic Codingにおいては、画像を用いたビジュアルフィードバックが有効だと言われています。
ここでは以下のモックアップに沿ってUIを変更してもらいます。
このモックアップ画像ファイルを指定し、UIデザインを変更するよう依頼します。
モックアップ画像が持っている要素を把握し、UIデザインを変更したことがわかります。
アプリを見ると以下のような画面になっており、完全ではないものの、モック画像に近しいデザインに変更されていることがわかります。
モックアップ画像に比べると、例えば検索バーの位置が異なっています。モックアップ画像では右寄せになっていますが、アプリでは左寄せのままです。なのでWebブラウザの表示のスクリーンショットを撮って、検索バーの位置を調整してもらいましょう。
完了したようです。デザインを確認してみましょう。
指示した通りに検索バーが変更されていることがわかります。元のモック画像に更に近づきました。
Claude Codeでは、画像からデザイン実装を行ったり、画像によってAIにフィードバックしたりすることで、直感的な改善サイクルを実現できます。Playwrightなどのブラウザ自動化ツールのMCPサーバを活用すると、このサイクルをさらに簡単に実現できます。
しかし、Agentic Codingも万能ではありません。ここからは、その失敗例と注意点について見ていきましょう。
Agentic Codingの失敗例と注意点
最近ではVibe Codingで作られたアプリケーションの問題がたびたび指摘されるようになってきました。実業務で利用するには注意が必要です。
Vibe Codingが招いた失敗ストーリー
Claude Codeが話題になっていたので、勢いで使い始めたAさん。「ECサイトの決済機能を作って」という雑な指示でコードを生成させ、AIが生成したコードをレビューせずにそのままマージしてしまいました。
しばらくして、同僚が決済代行サービスのAPIキーがハードコーディングされていることを発見。さらに複数のXSS脆弱性が検出され、同じ処理が3箇所に重複していたために修正漏れによるバグが頻発する事態となりました。
緊急セキュリティ対応で2週間の開発遅延が発生し、技術的負債の解消に1ヶ月を要することになりました。Aさんは周囲に「AIは全然使えない」と漏らしています。
問題とその対策
Veracode社の「2025 GenAI Code Security Report」によると、AI生成コードの45%に脆弱性が含まれていたとのことです。
セキュリティ面では、APIキーのハードコーディングや過度に広い権限設定、XSS脆弱性などが典型的な問題として挙げられています。また品質面でも、重複コードの生成や過度に複雑な実装、不十分なテストといった問題が散見されます。
対策としては、まずコードレビューや脆弱性スキャンの自動化などのワークフロー作りが挙げられます。また、仕様駆動開発のようなアプローチにより事前にきちんとアーキテクチャ設計してから実装を開始することも対策になるでしょう。
AI技術が進歩したとはいえ、まだ人間の知識や経験なしに安全で高品質なソフトウェアを作ることはできません。指示者が技術をわかっており、AIの生成物をレビューできる能力があるからこそ、AIを適切に活用できます。
実業務での活用ポイント
得意なタスクと苦手なタスクの理解
LLMには得意なタスクと苦手なタスクがあります。Claude Codeを実際の業務で活用する際には、タスクを「機械的処理」「LLM的処理」「人間の判断」の分類で捉えると良いでしょう。
ボイラープレートやドキュメントの生成などはLLMが得意なタスクです。一方で、コードフォーマットや構文エラーの検出といった決定論的に処理できるタスクは既存のlinterのようなツールに任せるべきです。ルールベースで確実に処理できるようなタスクにLLMを使ってしまうと、十分な品質担保ができなくなってしまいます。またビジネス要件定義や設計、UXの意思決定などは人間の判断が不可欠でしょう。
このように、あるタスクを「誰にどう実行させるべきか」を検討することが、AIを効果的に活用するために重要です。
効果的なプロンプトエンジニアリング
Agentic Codingには、プロンプトエンジニアリングの技術が欠かせません。
「TypeScriptでReactコンポーネントを作って」といった曖昧な指示よりも、「ユーザー情報を表示するカードコンポーネントをTypeScript + React + styled-componentsで作成して」のように具体的な指示の方が有効です。開発例のように画像を用いることも効果的でしょう。
AIの性能を引き出すためには、要件や技術スタック、制約、データ定義など、あるタスクに求められるコンテキストを必要十分にAIに伝えることが大切です。それはプロジェクトやタスクによって大きく異なるため、個別に最適化する必要があります。
チーム開発での導入戦略
チーム開発での導入においては、段階的なアプローチが良いでしょう。
先に述べた通り、プロジェクトやタスクによって必要なコンテキストや求められる精度が異なります。AIをより活用するには、AIが知るべきコンテキストを明文化したり、プロジェクト毎に応じた効果的に機能するワークフローを見つけたりといった取り組みが必要です。
そのため、最初からチーム全体での活用を試みるよりも、まずは個人タスクで有効に機能した例を徐々に広めていくと良いでしょう。効果的なプロンプト例がチーム内で積極的に共有、蓄積されることで、組織全体の開発力向上につながります。
まとめ:Agentic Codingがもたらす開発の未来
Agentic Codingは開発効率を向上させる一方で、セキュリティリスクや品質の問題も抱えています。失敗例を理解した上での活用が重要です。
エンジニアの役割は「コードを書く」から「AIを導く」へとシフトしています。コンテキストエンジニアリングとも呼ばれるこの新しいスキルセットが、今後の市場価値を決定する要素となるでしょう。
Claude Codeを活用して新しい開発スタイルに慣れていくことで、AI時代の開発者として競争力を維持できます。まずは小さなプロジェクトから始めて、徐々にAgentic Codingの威力を体感していきましょう。
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