未経験からAI開発に携わるためには? ーTech Valley(テックバレー)セミナーレポート
ITフリーランスに特化した20年の支援実績を持つギークス株式会社では、「Tech Valley(テックバレー)」と称し、エンジニアを対象とした最新の技術を学ぶ機会や知識を深めるセミナーを実施しています。
今回は、オーダーメイドのAIソリューション「カスタムAI」の開発・提供を事業とする株式会社Laboro.AIとタイアップ。
「未経験からAI開発に携わるためには?」をテーマに、Laboro.AI社エンジニアリング部で部長を務める吉岡氏に加えて、実際にキャリアチェンジを果たした機械学習エンジニア2名、システム開発エンジニア1名の総勢4名にご登壇いただきました。
エンジニアの皆さんは、公務員、塾講師、Web開発エンジニアと様々な職種からキャリアチェンジされた方々です。
AIエンジニアへの転身に興味がある参加者の皆さんには、今話題のAI業界にチャレンジするまでのリアルな体験談を聞くことができた大変貴重な時間となりました。
この記事の目次
開催の背景
「「Tech Valley(テックバレー)」は「エンジニアの好奇心を満たす出会いが見つかる」をコンセプトにした「企業」と「個人」を繋ぐ技術イベントです。
毎回テーマを変え、企業の代表やCTOをお呼びして、パネルディスカッションや講演など様々な形で開催しています。
本セミナーは、geechs job(ギークスジョブ)にご登録いただいているITフリーランスの「将来的にAI開発に携わりたいと考えているが、何から始めていいのか分からない」「様々な情報をもとにエンジニアとしての今後のキャリアを検討したい」といった声をもとに、企画いたしました。
登壇者紹介
吉岡 琢氏氏株式会社Laboro.AI エンジニアリング部部長
奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士後期課程修了。在学中に確率モデルによる情報処理の研究に従事。
修了後、研究所や企業で機械学習による脳活動計測、人流データ分析、深層学習によるロボット制御を経験。
2019年4月よりLaboro.AI社に参画し、強化学習、自然言語処理を中心に従事。 現在はエンジニアリング部部長としてカスタムAI開発の指揮をとる。
佐々木 星也氏株式会社Laboro.AI 機械学習エンジニア
元公務員
佐々木 雄哉氏株式会社Laboro.AI 機械学習エンジニア
元塾講師
※登壇予定だった金子氏の代理にて登壇いただきました。
光岡 駿氏株式会社Laboro.AI システム開発エンジニア
元Web開発エンジニア
ファシリテーターは、ギークス株式会社マーケティング部のMakinoが担当しました。
セミナーの内容
前半部:未来を切り拓くカスタムAI
〜ビジネスにおける活用と可能性とは?〜
セミナーの前半部では、エンジニアリング部 部長の吉岡氏が登壇し、Laboro.AI社の事業である「カスタムAI」開発、提供プロセスやそこで求められるエンジニアスキル、ビジネスにおけるAI活用や可能性についてお話しいただきました。
カスタムAIの開発は「企画構想、要件定義」から始まり、「開発、PoC(概念実証)」「導入、実装」「再学習、チューニング」となり、この中でエンジニアリングが関わる部分は「AI設計」「AI実装/改善」「AIと周辺システムとのつなぎ込み」があります。
カスタムAIのエンジニアリング領域は将来的に「複数のAIモデルの連携」と「AIモデルの動作環境の拡大」の方向性があり、その中でも「AIモデルの動作環境の拡大」は、スマホを始めとする小さな計算リソースでも推論ができるような取り組みが行われており、今後は様々な場面で機械学習モデルが使用される可能性が出てくるとのことです。
機械学習の分野においては、これまでPythonが主流となってきましたが用途を考えればJuliaやRustといった新しい言語の方が、機械学習モデルがうまく働く場所を提供できるようになる可能性もあるそうです。
このような可能性から、今後のエンジニアに求められるスキルとして、様々な環境・言語での開発に対応可能なスキルが必要になってくるだろうと話されました。
後半部:スキルチェンジを果たした3名のエンジニアが登壇!
〜AIエンジニアを目指す人に聞いてほしいトークセッション〜
後半部のトークセッションでは、他業種からキャリアチェンジし、機械学習を用いたシステム開発に携わるエンジニア3名の方に登壇いただきました。
まずは、「実際にどのようにしてAI開発に携われるようになったのか」3名の経歴からAI業界へのキャリアを築いた経緯をお話しいただきました。
その後の2つのトークテーマでは、それぞれの実体験から本音で、ディスカッションが繰り広げられました。
他業種からAI開発に携わるために必要なこととは
1つ目のテーマでは、キャリアチェンジを果たした3名が未経験からLaboro.AI社へ入社するまでのプロセスや学習において大切だと思うこと、AI開発に携わるために苦労したことなどをお話いただきました。
元公務員の佐々木 星也氏は、趣味でプログラミングをしていた経験から、未経験でWebのサーバーサイドエンジニアに転職されました。その後、フリーランスとして独立され、AI開発に携わることのできる案件で実務経験を積み、機械学習エンジニアとしてLaboro.AI社に入社したそうです。
最初はセミナーや書籍から学んだそうですが、E資格を取得するために受講しなければならなかった講座を受講することで、結果的にモデル実装への抵抗がなくなったと言います。フリーランスとして独立した後は、興味のあったAI開発の分野に携われることを最優先にして実績を積んだことが、入社に繋がったとのことですが、実務経験を積むことが何より大変だったと話しました。
元塾講師の佐々木 雄哉氏は、塾講師から塾経営と教育業界でキャリアを積む中で、必要だったデータ分析が今の経歴に繋がったと話します。模試の合格対策や生徒がどうやって回答したのか、必要となる情報を集めるためにデータ分析を学び、突き詰めた結果、機械学習エンジニアへの道に繋がったとお話いただきました。
当初は機械学習という新しい分野で周りには仲間がいなかったため、同じ分野を研究する仲間と出会うまでが大変だったそうです。
そして、元Web開発エンジニアの光岡氏は、Laboro.AI社ではシステム開発エンジニアというポジションでAI開発に携わっています。システム開発エンジニアとしては、業界に関わらず設計手法・開発手法・マネジメントなど、システム開発の土台が最も大切と話します。
そのうえでAI関連の知識習得のため、セミナーやG検定の取得などの学習によりAI業界へ近づいていったそうです。
光岡氏は、エンジニアの業界に残り続けるためには、好きでいることが大切。まずは興味のあるところから進めて、嫌いにならない、諦めないことが大切だと語りました。
採用者に対して未経験領域のポテンシャルをアピールする方法
2つ目のトークテーマでは、未経験領域への応募にあたって、エンジニア3名が準備していて良かったと考えるポイントをディスカッションしていただきました。
佐々木 星也氏は、ブログで技術や勉強の記事を公開したり、GitHubのコントリビューション数をアピールしたそうです。
光岡氏も自分のWebサイトで設計についての記事を書いたり、面接でシステムへの愛を語ったと話します。
最後に、佐々木 雄哉氏からは、機械学習への興味をアピールすることの大切さについて話がありました。実際に機械学習を利用して課題を解決しているのか、身近なところからアクションに移せているかも期待されるのではといったディスカッションが繰り広げられました。
応募当時、3名の選考を行った吉岡氏からは、実際に採用につながった理由や評価したポイントを教えていただきました。「難しい未知の課題にも恐れずトライして経験を積むことができるか」、エンジニアポジションでは「興味で終わらずにプロダクトやサービスとして作り切れるか」といった、熱意が伝わる行動。さらには「相手のことを考えて、伝えることができるか」など、コミュニケーションの能力面も評価につながったとのことです。これはGitHubなどの成果物においてもチェックされているポイントとのことでした。
また、AI開発に携わるために必要なスキルとして、ビジネスサイドやクライアントに説明できる力、説得力が必要というポイントも挙げられました。
このように、未経験の分野に挑戦する場合、その分野の知識習得や技術力向上にのみフォーカスしてしまいがちですが、コミュニケーションスキルや向上心などもポテンシャル評価においては重要になってくるようです。
そして最後に、今後のAI分野におけるエンジニアの需要について、光岡氏から次のように語られました。
今までは実証実験で止まっていたAIの分野だったが、ようやく社会実装できるという段階になってきています。モデル実装だけではなく、システム開発ができるエンジニアが必要となってくるフェーズに移り、エンジニアの需要も高まっていることを知ってほしいです。
さいごに
セミナー終了後のアンケートでは、「異業種から転職された方々の生の話が聞けて参考になった」「AIの活用事例を知ることができて勉強になった」など、実体験やエンジニアのリアルな声が聞けたことに満足いただけたという内容の感想が多数寄せられました。
Tech Valleyでは、今後も継続してエンジニアを対象とした最新の技術を学ぶ機会や知識を深めるセミナーを実施していく予定です。働き方の新しい「当たり前をつくる」と掲げ、ITフリーランスという働き方の啓蒙をエンジニアの方々と企業側双方へ行っております。
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