AIの発展から読み解くエンジニアのキャリアパスとは? ーTech Valley(テックバレー)セミナーレポート
ITフリーランスに特化した20年の支援実績を持つギークスでは、「Tech Valley(テックバレー)」と称し、エンジニアを対象とした最新の技術を学ぶ機会や知識を深めるセミナーを実施しています。
今回は、住友商事のDX専門企業である株式会社Insight Edgeとタイアップ。「AIの発展から読み解くエンジニアのキャリアパスとは?」というテーマで、データサイエンティストの伊達氏、エンジニアの筒井氏のお二人から本音で語っていただきました。
企業のDX化において様々な支援の実績をもつお二人のトークセッションは、データやAIを活用する経験を積みたいと考えるエンジニアはもちろん、AI技術の発展と今後の変化について理解を深めたい方に必見の内容となりました。
この記事の目次
開催の背景
「Tech Valley(テックバレー)」は「エンジニアの好奇心を満たす出会いが見つかる」をコンセプトにした「企業」と「個人」を繋ぐ技術イベントです。
毎回テーマを変え、企業の代表やCTOをお呼びして、パネルディスカッションや講演など様々な形で開催しています。
今回は、geechs job(ギークスジョブ)にご登録いただいているITフリーランスの方々からの「AI開発について興味がある」「様々な情報をもとにエンジニアとしての今後のキャリアを検討したい」といった声をもとに企画いたしました。
登壇者紹介
筒井 淳平氏株式会社Insight Edge Lead Engineer
大手事務機器メーカーに入社後、同社初となるクラウドサービスの立ち上げに参画し、ITインフラの設計・構築から運用を担当。
同サービスを利用した基幹システム連携ソリューション開発、AIを活用した画像変換サービスなど複数のシステム開発をリーディング。同社在米研究子会社との共同研究にも従事。
2021年10月にリードエンジニアとしてInsight Edge社に参画。
伊達 裕人氏株式会社Insight Edge Lead Data Scientist
大学院にて、深層学習を用いた脳活動分析に関する研究に取り組み、脳活動から被験者が見た画像を復元する手法や、測定状況の違いに頑健な分析手法を開発。
大学院修了後は、銀行系システム子会社で、金融エンジニアとして信用スコアリングモデル構築やデータ分析ツール開発等に携わる。
2022年3月にデータサイエンティストとしてInsight Edge社に参画。
ファシリテーターは、ギークス株式会社マーケティング部のMakinoが担当しました。
セミナーの内容
プログラムは2部構成で、前半部はAI活用に向けた住友商事グループの取り組みと利用技術について、後半部は、開発エンジニアとデータサイエンティストのお二人がテクノロジーとキャリアの2つのテーマについてトークセッション形式でお話ししました。
テクノロジー「AI技術をどう見る?」
住友商事グループでは、生成AIの活用を推進するCoE(※)組織が設立され、お二人はその中核の担うメンバーとして事業会社の生成AIの導入を進めています。
※CoE:センター・オブ・エクセレンス(Center of Excellence)の略。「組織を横断する取り組みの中核となる部署や研究拠点」を意味する。
最近話題の生成AI ChatGPTの事例として、社内でセキュアに使いたいという要望や社内の情報収集・分析、過去の情報をもとにした意思決定支援としての導入など様々な事業で活用されています。
AIと従来のソフトウェア開発との違い、AI活用における課題
従来のソフトウェア・システム開発と違い、AIが要素として入ると、データ、モデル、モデルの精度といった部分で不確実性が多くなります。そのブラックボックスとなる要素をどう扱うか、顧客と認識を合わせるという難しさがAIを取り入れたプロジェクトでは出てきます。
そのため、ヒアリングの中で顧客の期待値を理解したうえで、技術やデータの状況から期待値コントロールをすることが重要であるとリードエンジニアの筒井氏は語ります。
またデータサイエンティスト側の視点から伊達氏は、AI活用には「課題設定」が重要であるとあげました。最先端のAIモデルを使えばどんな課題でも解けるということはありません。その課題がAI活用により本当に解決できるのか、またその課題を解くことでインパクトがあるのか。モデルの評価やデータの精度、コストなど複合的な要素を考慮してゴールまで持っていけるかが大切であると述べました。
データサイエンティストとエンジニア、それぞれの立場からの質問
筒井氏から伊達氏へ「データサイエンティストとして論文の情報と実践の折り合いの付け方は?」との質問に対し、「AIの分野に限らないが、日々最新情報が出るなかでその情報の実用性など、取捨選択し見極めることが必要となります。そのためにInsight Edge社では社内チームでLT会(ライトニングトーク会)や最新技術をシェアする会を定期的に開催しています。」と伊達氏は回答しました。
伊達氏から筒井氏へ「エンジニア視点でデータサイエンティストに求めることは?」との質問に対し「データサイエンティストならではの視点を突き詰めてほしい」という要望があがり、専門性への期待値が伺える場面でもありました。
キャリア「エンジニアはどうあるべき?」
キャリアについてのトークテーマではAIが活用される現場での、エンジニアの姿勢や役割について語られました。
異なる専門分野間で円滑に業務を進めるには
最初にファシリテーターからは、データサイエンティストとエンジニア、異なる専門分野間で円滑に業務を進めるための方法について質問があがりました。
Insight Edge社はソフトスキルを持つメンバーが揃っていて、各々の専門性へのリスペクトがあります。また、エンジニア力、データサイエンス力、ビジネス力のバランスが求められ、相互理解の上でコミュニケーションが取れるのかという採用基準も設けられているそうです。
さらに、プロジェクトのゴールとして、実用化されどれだけビジネスインパクトがあるかという共通認識があることが、お互いを尊重しながら同じ方向へ円滑に進める秘訣と語られました。
こういった点は、Insight Edge社に限らずどの現場でも円滑に業務を進めるポイントではないでしょうか。
今後のエンジニアの役割とは
エンジニアの筒井氏からは、まずは生成AIが生む仕事も増えていくなかで、生成AIを使いこなすスキルが求められるだろうという意見があがりました。生成AIが出てきたことで、エンジニアとしては効率化できることも増えてきており、使いこなすスキルは必須であると言います。
またデータサイエンティストの伊達氏からは、簡単な分析や可視化というのはツールで誰でもカバーできるようになる。より複雑な分析や、特定の分野で深いスキル・経験をもつ人、ビジネスの現場の知識とAIを掛け合わせられる人の価値があがっていくのではないかという意見がありました。
AI活用におけるリスク
さらに話題はAI活用におけるリスクへ移ります。
実用化した後でもデータによってモデルの精度が変わるというリスクはあります。
また、モデルの学習や精度検証に使えるデータが少ないとAI活用は難しく、医療系などは特に誤認識を起こした場合の損害が大きくなるためハードルが高くなります。サンプルが少ないレアケース等では、専門家のフィードバック・サポートができる環境が普及には必要です。
AIの影響度がさらに拡大する未来にむけて
組織としては、個人が勉強した技術を業務で活用できる環境を用意していく必要があります。参画した技術者が技術選定でき、業務として実践できる環境が大切となります。
その環境のなかで、課題発見力や結果ドリブンの仕事ができること、Insight Edge社が掲げるATP(明るく・楽しく・プロらしく)の精神でポジティブに取り組める姿勢というのが、今後求められるエンジニア像ではないかとお二人からは語られました。
さいごに
セミナー終了後のアンケートでは、「生成AIの開発でどのようなことを考え、進めているのか、イメージできた。論文を読んで学んだり、どのモデルを使用するのかを判断したりと、取り組み方に興味を持った。」「現場でChatGPT導入されるもセキュアな活用方法が分からず使えていなかったので、活用している人の話が聞けて良かった。」などの感想が寄せられました。
Tech Valleyでは、今後も継続してエンジニアを対象とした最新の技術を学ぶ機会や知識を深めるセミナーを実施していく予定です。働き方の新しい「当たり前」をつくると掲げ、ITフリーランスという働き方の啓蒙をエンジニアの方々と企業側双方へ行っております。
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