精算幅ってなに?業務委託でよく聞く契約形態について徹底解説
ITフリーランスの案件情報を見ていると、報酬額の近くに「140〜180時間」などという表記を目にしたことはありませんか?これは契約ごとに取り決める支払い条件のひとつで、精算幅の条件を表しています。精算幅は、業務委託契約のなかでもITフリーランスならではの商習慣と言えるでしょう。この記事では、精算幅について詳しく解説していきます。
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精算幅(時間幅)とは
精算幅(または時間幅)とは、準委任契約において月額単価に付随する契約条件の一つです。精算幅がつく契約の場合、月の合計作業時間が予め定めていた想定作業時間の範囲内であれば、月額単価の満額を請求します。もしそれより多く作業をした場合は超過料金をあわせて請求し、逆に足りなかった場合は控除料金を差し引いて請求をする、という取り決めです。
1ヶ月あたりの作業時間の目安としては、一般的な会社員の勤務時間に相当する1日8時間・週5日の作業量を想定した、160時間がひとつの基準になるでしょう。そこにプラスマイナス20時間の幅を持たせた月間140時間〜180時間という精算幅なら、暦によって左右される月ごとの作業日数の変動を加味しても、満額請求の範囲内に収まりやすくなります。
▼ 週5日稼働案件の精算幅目安:1人月と表現されます。
1日8時間 × 月間20日作業 = 月間作業時間 160時間
→ ± 20時間 = 140時間〜180時間
ただし精算幅で設定する作業時間の上限及び下限値は、契約によって異なります。140〜180時間だけでなく、150〜180時間、160〜200時間など、双方合意の上で自由に定められます。
また週2〜4日等の半稼働案件では、週5日対応案件よりも想定作業時間が減るため精算幅もそれにあわせます。
▼週3日稼働案件の精算幅目安:0.6人月と表現されます。
精算幅が140~180時間の契約の場合は、それに0.6をかけたものが週3日稼働の場合の精算幅となります。
140×0.6人月=84時間、180×0.6人月=108時間
よって精算幅は84時間~108時間と設定されます。
精算幅はあくまで条件の一つで、準委任契約のすべての契約で適応されるとは限りません。精算幅のない契約は「固定(または固定精算)」と呼ばれ、作業時間の多寡に関わらず月額単価の満額を請求します。言い換えれば、どれだけ時間をオーバーして作業をしても、超過料金は受け取れません。同様に作業時間が少なくても満額請求する権利はありますが、実際のところ、想定作業分を対応しきれないフリーランスには、継続発注の見送りや契約終了になってしまう危険性が高まります。
この精算幅という契約の概念は、プロジェクトのスケジュール都合や、突然のトラブルシューティングなどで過重な作業負担を負いかねない、SESのエンジニアを守るために生まれたという、業界特有の背景があります。案件の特性や諸条件との兼ね合いで一概に損得の断定はできませんが、精算幅つきの契約はITフリーランスの身を守るクリーンで公平な契約条件であるといえるでしょう。
超過控除の精算方法「上下割」「真中割」について
精算幅つきの契約の場合、1ヶ月の作業時間が定められた上限時間を超えた場合には、超過料金が加算され、逆に下限に満たなかった場合には料金の減額が発生します。超過及び控除料金の精算方法には、「上下割」または「真中割(中央割)」の2種類あり、こちらもまた契約条件の一つとして予め取り決められます。
上下割
上下割とは、超過単価の算出には上限値で、控除単価の算出には下限値で月額単価を除する計算方法です。そのため超過単価と控除単価の額はそれぞれ異なります。
▼ 月額報酬 50万円(140〜180時間)の場合
超過単価:50万円 ÷ 180時間 = 1時間あたり 2,777円
控除単価:50万円 ÷ 140 時間= 1時間あたり 3,571円
※小数点以下切り捨て
真中割
真中割とは、超過及び控除単価の算出に、時間幅の中央値で月額単価を除する計算方法です。超過及び控除単価は、いずれも同額になります。
▼ 月額報酬 50万円(140〜180時間)の場合
超過控除単価:50万円 ÷ 160時間 = 1時間あたり 3,125円
作業時間単位と想定作業日数
このように精算幅つきの契約条件では、時間的な条件によって請求できる月額報酬が変動します。契約締結においては、作業時間に関連する取り決めや予定を確認する習慣をつけましょう。以下には新人フリーランスが見落としがちな、事前に確認したい項目を取り上げます。
作業時間単位
アルバイトで例えると、タイムカードを切る時間単位に当たります。1分、10分、15分、30分、60分のうちいずれかの単位で、クライアントの方で事前に取り決められていることが一般的です。時間幅つきの準委任契約では、月間の作業時間に基づく作業内容とその報告が請求の根拠になるので、毎日の作業時間を記録していきます。
想定される作業日数
年末年始や夏季休暇などにより、クライアントの営業日数が月によって大きく変動する場合もあります。準委任契約ではクライアントの休暇にあわせて作業を控えるケースが多いので、予めクライアントの営業日数を確認し、自身の作業日数を見積もりましょう。月によって変動する営業日数を加味しても、基本的に精算幅に収まる条件になっていると理想的です。
精算幅のない契約とは?
精算幅とは基本的に、業務委託契約の中でも準委任契約に適用されるものです。雇用契約や、請負契約には精算幅という概念は存在しません。
雇用契約と業務委託契約の違いは、指揮命令権と責任の範囲にあり、業務委託契約では指揮命令権はありません。
また、フリーランスエンジニアの契約に多い業務委託契約では、準委任契約と請負契約どちらかでの契約となることが多いです。請負契約においては、成果物に対して完成責任が発生し、契約で定められた成果物を納品し、それがクライアントの要求を満たしているかどうかに対して責任を負う必要があります。
また、その成果物に欠陥があった場合に修正や補償を行う、契約不適合責任(瑕疵担保責任)が伴います。例えばシステム開発を請け負い、そのシステムにバグがあったり、仕様を満たしていない場合、その修正を行う義務があるということです。この責任は、納品後一定期間の間(通常は契約で定められた期間)に発生します。
一方、準委任契約では、作業そのものに対する責任があり、成果物の完成責任は発生しないため、契約不適合責任も基本的にはありませんが、作業を可視化するために精算幅が設定されていることが多いです。
契約条件の交渉は専門エージェントに相談を
精算幅の概念や生まれた背景、超過及び控除料金の計算方法や、契約時に注意すべきポイントを解説してきました。初めて精算幅を目にしたときには戸惑うかもしれませんが、ITフリーランスとして仕事をする上では欠かせない業界知識です。
これから締結しようとする契約は、精算幅があるのか固定なのか、上限時間と下限時間はいくつなのか、精算方法は上下割か真中割か。双方合意のうえで決定する事項が多く、実際の支払額に影響することから、月額単価とあわせて交渉のテーブルに上がることが多い契約条件です。
ギークスジョブはITフリーランス専門エージェントとして、ITフリーランスが最も働きやすい140〜180時間の精算幅つきの契約締結を目指し、クライアントへ交渉を行ってきました。その結果、現在は取り扱い案件のほとんどで、140〜180時間の精算幅を前提とした条件でご案内ができるようになりました。また複数案件の並行受注やプライベートの両立を目指して、週3日稼働や早上がりといった作業時間の短縮に関する交渉代行も承っております。
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