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なぜ今、エンジニアが現場の最前線に戻るのか。FDEが問い直すAI時代の開発価値

作成日:2026/09/04(金) 最終更新日:2026/09/04(金) 企業向け

なぜ今、エンジニアが現場の最前線に戻るのか。FDEが問い直すAI時代の開発価値

昨今、AIによる開発の効率化が進む一方で、「導入したものの期待した成果が出ない」と悩む企業は少なくありません。そうした中、AIエンジニアリングの「ラストワンマイル」の課題を解決する存在として注目を集めているのが「FDE(Forward Deployed Engineer)」です。今回は、顧客の課題特定からプロダクトの開発・実行までを一気通貫で支援するアンドドット株式会社のCTO高根沢氏とCo-Founder東川氏に、FDEの真の価値と組織への組み込み方、そしてAI時代におけるエンジニアのあり方についてお話を伺いました。


※アンドドット株式会社様とは、これまで複数回イベントを共催しており、FDEというキーワードで先進的な知見をお持ちのため、本記事の取材にご協力いただきました

【取材協力】

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アンドドット株式会社
取締役CTO  高根沢 光輔 氏
2011年にエンジニアとして活動を始め、これまで多数の企業でWEB系のFullstack-Engineer・EM・PdMとして従事。大学では自然言語処理を組み込んだAIサービスの開発・研究を行う。その他テック企業の技術顧問も務める。アンドドットではCTOとしてプレイングマネージャを務める。

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アンドドット株式会社
共同創業者 / 取締役  東川 宏樹 氏
マイクロソフト系列のITコンサルタントとしてキャリアをスタート、大手複数社のDX推進やIT基盤システムの改修PJTなど幅広く携わる。その他、CMO/CBO/クリエイティブディレクター/人材業界の新規事業責任者を経験し、現在アンドドットを共同設立。

取材日:2026年8月17日

第1章:FDEとは何か — “役割”ではなく“組織の設計思想”として捉える

第1章:FDEとは何か — “役割”ではなく“組織の設計思想”として捉えるの画像

最近のプレスリリースでも「AIエンジニアリングのラストワンマイルを解く」と力強く発信されていました。昨今、「FDE」というキーワードがIT業界で急浮上していますが、FDEという考えはPalantir社などを起点に広がった考えであると思います。世間一般からは従来の「客先常駐SES」や「技術コンサルティング」と何が違うのか、という戸惑いの声も聞かれますが、御社ではどのようにお考えでしょうか?

高根沢氏:そうですね。 一般的なSESや受託開発は、あらかじめ「決まったもの」を作りに行ったり、要件定義などの上流工程からプログラミングなどの下流工程までを切り出して担ったりするのが基本です。しかし、FDEはそのさらに前の段階、つまり「そもそもお客様の真の課題はどこにあり、何を作るべきか」という企画や課題の深掘りから一緒に入り込んで考えていきます。ここが間違っていると、どんなに素早くシステムを作っても、結局現場で使われないものになってしまうからです。 また、技術顧問のように「この技術を使えばいいですよ」とアドバイスをするだけでもありません。お客様の課題から一緒に考え、合意形成を行った上で、そのまま自分たちの手を動かして実行からデプロイまでを一気通貫で担う。それがFDEであり、従来のSESや技術コンサルティングとの明確な線引きになります。

読者である開発マネージャーやエンジニアの方々に、FDEの本来の価値を一言で表すとどうなりますか?

高根沢氏: 一言で言えば、「『実際に手を動かして作れる人間』が『何を作るか』の企画段階から意思決定できること」が最大の価値です。 これまでのように、営業担当者がお客様と「こういうものが欲しい」と合意してから開発現場にボールが投げられるプロセスでは、どうしても理想と現実のギャップが生まれがちでした。営業が約束した豪華な機能が、現場の技術的な制約で実現できないといったケースです。しかし、FDEでは作れる人間が最初からフロントに立ちます。そのため、フィジビリティ(実現可能性)が最も高く、かつ少ない工数で最大の効果を生む「おいしいところ」を正確に見極めることができます。エンジニア自身が直接お客様とコミュニケーションを取るため、認識のズレが起きず、圧倒的なスピードと短い工期でプロジェクトを成功に導くことができるのです。

2026年7月に弊社と開催したイベントで「自社製品を持っていなくてもFDEは成り立つのか?」という質問がありました。これについてはいかがでしょうか?

高根沢氏: はい、十分に成り立ちます。たしかに一般的に指すFDEは、特定の自社製品やプラットフォームを顧客環境に適合させるモデルとして語られることもあります。しかし、私たちはこれまで様々なアプリケーションを作っては壊してきた圧倒的な経験値と「生きたナレッジ」を持っています。 AIを使ったソフトウェア開発は、ある程度アーキテクチャやアプローチをパターン化できます。過去の類似案件のナレッジや私たちが蓄積してきたプロンプトスキルを活用することで、大抵のものはスピーディーに作れてしまいます。なので、特定のプラットフォーム製品を持っていなくても、お客様の課題に対して最も柔軟で最適な形を模索し、提供することができるのです。FDEの定義は世間で様々ですが、私たちはこのような捉え方で良いのではないかと考えています。

FDEというワードが注目される中、世の中の反応や企業からのリアクションはどのように感じられていますか?

東川氏: まだまだ「FDE」という言葉自体が、私たちが定義するものと世間一般の認識で差があると感じています。従来の「自社製品ありき」の提案ではなく、私たちがこれまで無数のアプリケーションをスクラップアンドビルドしてきた過程で得た「生きたナレッジ」こそ真の強みとして発揮されると考えています。

第2章:なぜ今FDEが必要になったのか — AIが変えた開発の前提

第2章:なぜ今FDEが必要になったのか — AIが変えた開発の前提の画像

現在、「AIで開発は速くなったが成果が出ない」という悩みをよく耳にします。この背景にある開発現場の構造変化について、御社はどう分析されていますか?

高根沢氏AIツール自体を導入している企業は増えていますが、それを真の意味で「使い倒している」人は、組織内にまだ1〜2割程度しかいないのが実情だと思います。 AIで劇的な成果を出すためには、エンジニア自身がこれまでの仕事の型をアンラーニング(学習棄却)し、AIに作業を委譲していく思考の転換が必要です。ベテランであればあるほど今までのやり方を変えることに抵抗がありますし、逆に若手の場合は、AIが出力したコードや結果が正しいかどうかを判断する技術的知見が不足しているという課題があります。この壁を越えられない限り、AIによる生産性の飛躍的な向上は実現しません。

ボトルネックがコーディング以外の部分に移る中で、「ラストワンマイルの課題は人が現場に入り込まないと解けない」と言えるのはなぜでしょうか?

高根沢氏: AIの進化スピードは凄まじく、例えば半年前に時間をかけて要件定義した内容が、いざ開発を始める頃にはすでに時代遅れになっている、ということが平気で起こる世界です。また、先ほども触れましたが、要件と現実のプロダクトの間に生じるギャップは昔からある根深い課題です。 FDEは、1名から2名の少数精鋭でお客様と密にコミュニケーションを取り、企画から開発、リリースまでを一貫して行います。現実的に「作れるもの」をベースに期待値を調整しながら進めるため、お客様の期待を裏切らず、かつ現代のAI技術の恩恵を最大限に活かしたプロダクトを最短で提供できるのです。

AIの進化が非常に速い中で、どのように最新技術をキャッチアップされているのでしょうか?

高根沢氏: 新しい技術のキャッチアップについても、AIそのものを活用しています。AIエージェントを使って、決まった時間に自動で最新情報のリサーチや検証作業を行わせる仕組みを導入しています。 新しいAIツールやモデルが出たからといって、すぐに飛びついて現場を振り回すことはしません。まずはAIに検証させ、その結果を組織として解釈し、本当に使える技術かどうかを慎重に見極めています。個人の知見に留めず、組織全体でナレッジを共有・活用することを徹底しています。

第3章:FDEをどう組織に組み込むか — 属人化の回避とセキュリティの壁

1人のFDEが広範囲を担うと「属人化」が懸念されがちです。組織として再現性を高めるための具体的な仕組みを教えてください。

高根沢氏: 属人化を防ぎ、組織全体でAIの活用レベルを均質化するために、「AI Harness(ハーネス)」という独自のコミュニケーションアプリとMCP(Model Context Protocol)サーバーを連携させたAI駆動開発環境を構築しています。 この環境では、エンジニアが@AIメンションで指示を出すと、実装からデプロイまでが自動で行われます。最大のメリットは、社内の他のエンジニアがAIに対して「どのようなプロンプトで、どう依頼しているか」がすべてオープンに見えることです。これにより、優秀なエンジニアの思考プロセスや依頼の仕方が組織全体に共有され、誰が使っても再現性のある高いアウトプットが出せるようになっています。また、週に1時間の勉強会も必ず実施し、成功事例を積極的に共有しています。

大企業や自治体などでは情報流出リスクへの懸念からツールの導入や承認が遅れがちですが、安全かつスピーディに検証を進めるための工夫についてお聞かせください。

高根沢氏: 企業規模が大きくなるほど、情報流出への懸念は強くなります。そのため、私たちは初期データが一切入っていない専用のWindowsリモートデスクトップ環境(Amazon Workspacesなど)を構築して提供したり、AIハーネスの環境として利用しています。 この環境内にはあらかじめClaudeやCodexなどのAIツールがインストールされていますが、外部からの機密ファイルの持ち込みや、不要な情報の入力ができないよう制御されています。AIの学習にも使われない設定を徹底しているため、自治体や金融、エンタープライズといった会社でも安全にAIを使い倒すことができます。セキュリティの壁を技術でクリアすることで、スピーディーな検証と開発のスタートを実現しています。

お客様の深いドメイン知識を短期間で理解するために、工夫されていることはありますか?

高根沢氏: お客様の業務フローや真の課題を深く理解するために、「合宿」という手法を積極的に取り入れています。プロジェクトの初期段階で、お客様の業務責任者や担当者の方々と2〜3日の合宿を行い、業務の全体像の把握と課題の特定を一気に行います。 この合宿を通じて期待値を早期にすり合わせ、方向性を完全に合意してから開発に入るため、その後のプロジェクトの進行スピードが劇的に上がり、認識のズレも防ぐことができます。

第4章:FDEに求められる人材と、独自の「CEPOモデル」による育成

FDEとして理想的な人物像と、現場で機能するために求められる要件について教えてください。

高根沢氏: ソフトウェア開発の基礎的な知識を持っていることは大前提ですが、それ以上に「課題の発見や企画提案の積極性」が不可欠です。 エンジニアの中には「言われたものをその通りに作る」ことには長けていても、企画から入ることや、要件が途中で変わることが苦手な人も少なくありません。しかしFDEは、お客様との対話の中で要件が柔軟に変わっていくことを前提としています。その変化に対応できる応用力と、「もっとこうしたら良くなるのではないか」と能動的に提案できる姿勢が重要です。

そのような「自ら提案できる」人材を育てるために、独自の評価基準を設けていると伺いました。

高根沢氏: はい。当社では、FDEに求められる能力を「CEPO(セポ)モデル」という4つの指標で定義し、5段階のレベルで評価しています。CEPOは以下の頭文字をとっています。


評価軸 定義
C(Consulting) 課題を分析し、解決の方向を決める力
E(Engineering) AIを活用してフルスタックに開発する力
P(Project Management)) 計画・予算・進捗・品質を管理する力
O(Open & friendly) 相談される存在になる、親しみやすさ
第4章:FDEに求められる人材と、独自の「CEPOモデル」による育成の画像

※アンドドット社にて特許出願中


レベル1の「補助ができる」段階から、レベル5の「業界横断で再現可能」な段階まで明確な基準を設けています。例えば、レベル3以上になれば中規模案件を一人でリードして顧客の前に出られる「シニアFDE」、それ以下であれば育成中の「FDE」といった形で役割を分けています。このCEPOモデルについては、現在特許を出願中です。技術力(E)だけでなく、顧客のビジネスを理解する力(C)や、人間的な魅力(O)も同等に評価することで、バランスの取れたFDEを育成しています。

育成の最大の難所である「指示待ちからの脱却」を促すために、どのようなサポートをされていますか?

高根沢氏: 「どんな提案であっても、頭ごなしに否定せず、まずは受け入れる」という文化を徹底しています。提案が否定されるという恐怖心があると、現場からの声は上がってきません。 重なる部分として、「提案した人が自ら手を動かして実行する」という基準もセットで持たせています。会議では「今やるべきか、一生やらないか」の二択で物事を判断し、やると決めたらその日、遅くとも翌日にはプロトタイプを作って検証するスピード感を求めています。 また、若手や経験の浅いメンバーに対しては、1日1回のデイリーフィードバックを行っています。こまめなコミュニケーションで軌道修正を行いながら、うまく回り始めたら権限を大きく委譲していくことで、自律的なFDE人材へと育成しています。マネージャー自身もプレイングマネージャーとして手を動かし、背中で基準を示すことを大切にしています。

第5章:AI時代の「π型人材」育成と、FDEが切り拓くエンジニア組織の未来

第5章:AI時代の「π型人材」育成と、FDEが切り拓くエンジニア組織の未来の画像

これからのAI時代、IT業界やエンジニアの価値はどのように変わっていくとお考えですか?

高根沢氏: AIの活用によって、純粋なプログラミングや実装の生産性はAI活用で何倍にも効率化されます。実際、当社の開発においてもコードの大半はAIが記述している状態です。そうなると、エンジニアの価値は単なる「実装作業」ではなくなります。 今後は、顧客のマーケットを理解した上での「企画力」や、AIが生成したコードに対する「動作確認・セキュリティチェックの責任を持てる判断力」といった、実装の「前後工程」を担えるかどうかが市場価値を大きく左右します。これまでの深い専門性と幅広い知識を持つT型人材からさらに進化し、技術力に加えて企画やビジネス視点というもう一つの軸を持つ「π(パイ)型人材」へと成長していくことが、これからのエンジニアの生存戦略になると考えています。

最後に、アンドドット株式会社としての今後の展望をお聞かせください。

高根沢氏: 単なる受託開発ではなく、お客様と同じ目線で課題解決までコミットする姿勢を貫き、「FDEといえばアンドドット」と言われるような圧倒的なブランドを確立していきたいです。 実装作業の自動化が進むAI時代だからこそ、現場の最前線でお客様の本当の課題を見抜き、価値提供までを一気通貫でやり切るFDEの存在価値はより高まっていきます。私たちはこれからも、FDEという新たな組織のあり方を通じて、IT業界の未来を切り拓いていきます。
東川氏: AIやAXのトレンドが急速に変化する中で、1年先に何が起きているか分からない時代だからこそ、私たちは自社だけで完結せず、企業様とのジョイントベンチャーや共同研究など、アセットを出し合って価値を共創していきたいと考えています。 また、CEPOモデルにおける「O(Open & friendly)」の部分、つまり誰からでも信頼される人格を備えることも非常に重要です。技術力だけでなく人間的な魅力も兼ね備えた人材とともに、時代に合わせたサービスをこれからも社会に届けていきたいです。


ー本日は貴重なお話をありがとうございました!

インタビュー企業様ご紹介

会社名: アンドドット株式会社
URL: https://www.and-dot.co.jp/

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今回ご紹介したFDEのような新しい役割・組織のあり方は、自社の育成だけでなく、外部の専門人材の活用と組み合わせることでよりスピーディーに実現できるケースも多くあります。
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