JavaScriptランタイム「LLRT」とは?概要を分かりやすく解説
2024年2月にAWSが公開したJavaScriptランタイム「LLRT」(Low Latency Runtime)が密かな話題となっています。AWS Lambdaでの利用にフォーカスしコスト低減効果が最大で2倍になることで注目が高まっており、awslabsリポジトリの中でもGitHubスター履歴が急上昇しています。そこで、今回はLLRTについて、メリットやデメリット、将来性を含めて、分かりやすく解説していきます。
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LLRTとは
LLRT(Low Latency Runtime)は、AWSによって開発された新しい実験的なJavaScriptランタイムで、特にAWS Lambda向けに設計されています。このランタイムは、特にコールドスタートの時間を短縮し、実行コストを削減することを目的としています。LLRTは、起動時間を大幅に短縮し、メモリ使用量を抑えることができるため、レイテンシーが重要なアプリケーションに適しています。
LLRTの特徴・メリット
高速起動
LLRTは、特にAWS Lambda環境でのコールドスタートを軽減することに焦点を当てて設計されています。AWSのコールドスタートは、サーバーレスコンピューティング環境において、特にAWS Lambdaで関数を実行する際に遭遇する遅延の問題です。具体的には、Lambda関数が一定時間不活動の後に再度呼び出されるとき、新しいインスタンスが起動して必要な環境を初期化する必要があります。このプロセスには時間がかかり、関数の応答時間が遅くなる原因となります。
LLRTではQuickJSを採用したことにより、JavaScriptエンジンのサイズが非常に小さく、起動時間が短縮されています。AWSによると、他のJavaScriptランタイムと比較して起動速度が約10倍高速化されており、AWS Lambdaでの費用コストが約2倍*低減されると報告されています。この高速起動は、サーバーレスアプリケーションにおいてユーザー体験を向上させ、レスポンスタイムの短縮に貢献します 。
*参考:Publickey
メモリ使用量の削減
V8エンジンと比較して大幅に小さなQuickJSが採用されているため、ランタイムのメモリフットプリントが小さくなり、より多くのアプリケーションが同時に実行可能となります。特にリソースが限られる環境下でのアプリケーションのパフォーマンスを安定させることができます。
JIT(Just-In-Timeコンパイラ)を使用しない
Just-In-Time(JIT)コンパイラは実行時にコードを機械語に翻訳するプロセスであり、この過程が起動遅延の一因となることがあります。LLRTはこのJITコンパイラを省略した設計になっているため、コールドスタートの遅延を削減することができます。ただし、計算集約的なタスクや長期間にわたる高負荷の処理には適していないという点には注意が必要です。
LLRTのデメリット
LLRTは、特にAWS Lambda環境でのコールドスタートの遅延を軽減するために設計されていますが、その設計上の選択が特定の使用シナリオには適していない場合もあります。
計算集約的なタスクや長時間実行が必要な場面には向かない
前述のようにJIT(Just-In-Time)コンパイラを使用していないため、実行時の最適化が行われず、計算集約的なタスクや長時間実行が必要なアプリケーションではパフォーマンスが不十分になる可能性があります。このような場合、Node.js、Bun、Denoなどの他のランタイムが適しています。これらはJITを含むより複雑なエンジンを利用しており、長時間実行されるアプリケーションや重い計算を扱う際に効率的です。
費用コストが高くなる場合もある
LLRTを使用することで費用コストが高くなるケースもあります。たとえば、LLRTはAWS Lambdaの「カスタムランタイム」として機能します。AWSの標準ランタイムと比較して、カスタムランタイムはランタイムの初期化中もコストが発生するため、管理体制が不適切な場合、コストが増加する可能性があります。また、LLRTが特定のAPIやライブラリに対応していない場合、これらの機能を代替するための追加のコードが必要になることがあり、これも処理時間の増加やコスト増につながる可能性があります。
LLRTを選択する際は、アプリケーションの要件と実際の運用シナリオを慎重に評価し、他のランタイムとの比較検討が必要です。コールドスタートの遅延が主要な問題である場合や、起動速度とコスト削減が重要な場合にはLLRTが適していますが、長時間実行や計算集約的なタスクを伴うアプリケーションでは、Node.jsやその他のランタイムの方が適切な選択となるでしょう。
LLRTの将来性
パフォーマンスの最適化と拡張:
現在のLLRTは起動時間の短縮に特化していますが、将来的には実行時間の効率化やリソース利用の最適化を図る改良や、計算集約的なタスクや長期間の処理が必要なアプリケーションでのパフォーマンス向上が期待されます。
エコシステムの拡充
AWSは通常、新しいサービスやツールに対して広範なドキュメント、ライブラリ、統合ツールを提供します。LLRTも例外ではなく、今後より多くの開発ツールや統合ソリューションが提供されることで、開発者がLLRTを利用しやすくなると考えられます。
セキュリティと安定性の向上
新しい技術としてのLLRTは、セキュリティと安定性の面でも継続的な改善が求められます。これにより、企業レベルの要求に応えるためのセキュリティ機能や耐障害性の向上が期待されます。
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コールドスタート問題の管理と最適化は、Lambdaを使用するアプリケーションのパフォーマンスとコスト効率を向上させるために重要です。そのためにLLRTを使うことが最適な選択となり得ます。
AIを含むテクノロジーの進化によって、アプリケーションに求められる機能や処理が高度かつ複雑になり、その分、速度やコスト面の問題も常に解決していく必要が出てきています。
プロダクトの機能を高めるだけでなく、速度、コスト、セキュリティの部分を含め、総合的に課題を解決できるような視点を持つようにしましょう。
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